2012年2月26日

共同作業の基礎知識 「伽藍とバザール」

知らない人も多いようなので、エリック・S・レイモンドの1997年の論文を一部だけ引用します。まずは、この論文の主題であるリナックス(Linux)と呼ばれるソフトウェアについての簡単な説明を少々。

リナックスとは、リーナス・トーバルズが個人で1991年から作り始めたソフトウェアで、今は世界中のサーバーやスマートフォン(Android)、色々な家電、スーパーコンピュータで利用されている基本プログラムの名前です。オープンソース、つまり無償公開されているのが特徴。

この論文のなかで、

「目玉の数さえ十分あれば、どんな問題も深刻ではない」という名言が述べられています。







『伽藍とバザール・The Cathedral and the Bazaar』



1 伽藍方式とバザール方式

Linuxは破壊的存在なり。インターネットのかぼそい糸だけで結ばれた、地球全体に散らばった数千人の開発者たちが片手間にハッキングするだけで、超一流のOS が魔法みたいに編み出されてしまうなんて、ほんの 5 年前でさえだれも想像すらできなかったんだから。

ぼくもできなかった。Linux がぼくのレーダー画面に泳ぎ着いたのは 1993 年の頭だったけれど、その頃ぼくはすでに Unixやフリーソフト開発に 10 年以上も関わってきていた。1980 年代半ば、ぼくは最初期の GNU協力者の一人だったし、ネット上にかなりのフリーソフトもリリースして、いまでも広く使われているようなプログラムをいくつか(nethack、Emacs VC モードと GUD モード、xlifeなど)単独または共同で開発してきた。だから、もうやり方はわかってるもんだと思いこんでいた。

Linuxは、ぼくがわかっているつもりでいたものを、大幅にひっくりかえしてくれた。それまでだって、小さなツールや高速プロトタイプ作成、進化的プログラミング といったUnixの福音は説き続けてはいた。でももっと上のレベルでは何かどうしようもない複雑な部分がでてきて、もっと中央集権的で、アプリオリなアプローチが必要に なってくるものだとも思っていた。一番だいじなソフト(OS や、Emacsみたいな本当に大規模なツール)は伽藍のように組み立てられなきゃダメで、一人のウィザードか魔術師の小集団が、まったく孤立して慎重に組み立てあげるべ きもので、完成するまでベータ版も出さないようでなくちゃダメだと思っていた。

だから リーヌス・トーヴァルズの開発スタイル――早めにしょっちゅうリリース、任せられるものはなんでも任して、乱交まがいになんでもオープンにする――には まったく驚かされた。静かで荘厳な伽藍づくりなんかない――Linuxコミュニティはむしろ、いろんな作業やアプローチが渦を巻く、でかい騒がしいバザールに似ているみたいだった(これをまさに象徴しているのがLinux のアーカイブサイトで、ここはどこのだれからでもソフトを受け入れてしまう)。そしてそこから一貫した安定なシステムが出てくる なんて、奇跡がいくつも続かなければ不可能に思えた。

このバザール方式がどういうわけかまともに機能するらしく、しかもみごとな結果を生むなんて、衝撃以外の何物でもなかった。この世界の様子を学ぶにあ たって、ぼくは個別のプロジェクトだけでなく、なぜ Linux界が混乱のうちに崩壊しないのか、それどころかなぜ、伽藍建設者たちの想像を絶するスピードで、続々と強みを発揮し続けられるのかを理解しようとしてき た。

1996 年半ばには、答がわかりかけてきたような気がした。そしてその頃まったくの偶然から、自分の理論を試してみる完璧な機会がやってきた。意識的にバザール方式で運営できるようなフリーソフトプロジェクトという形で。そこでバザール方式を試してみた――大成功。

というわけでこれから、そのプロジェクトの話をしようではないの。そしてそれを使って、上手なフリーソフト開発についていくつかアフォリズムを提案してみよう。全部が全部、Linux の世界で学んだことばかりではないけれど、そういうものでも Linux界がすごくいい例になってることがわかるはず。ぼくが正しければ、なぜ Linuxコミュニティがこんなにいいソフトを続々と生み出せるのか、みんなにもずばりわかるはず――そしてみんなももっと生産的になれるはずなんだ。

(以下略)

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日本語訳URL   http://cruel.org/freeware/cathedral.html


Wikipedia「伽藍とバザール」 ⇒ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%BD%E8%97%8D%E3%81%A8%E3%83%90%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%AB


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